阪急ブレーブス通信

〜阪急ファンで行こう!EVOLUTION〜

打ってよし守ってよし顔もよし!阪急ブレーブスが生んだスター簑田浩二の「本当の凄さ」


最近、ベースボールマガジンから阪急ブレーブスやオリックス・ブレーブス&ブルーウェーブを特集した雑誌が立て続けに発売され、われわれファンを楽しませてくれています。既に目を通された方も多いと思いますが、改めて阪急ブレーブスからの系譜では、すばらしい選手が多かったことを実感します。中でも外野手には走攻守揃った名手が伝統的に多く、ファンとしても誇らしい気分になります。


以前から、阪急ブレーブス時代の「簑田、福本、ウイリアムス」とオリックスブルーウェーブ全盛期の「田口、本西、イチロー」とではどちらが史上最強の外野陣か、といった議論もあり、ハイレベルな外野陣が伝統的に形成されていたことを物語ります。時代も違いますので単純な比較はできませんが、最近では阪急ブレーブス時代のアーカイブ映像が公開されるなどしており、あらためて当時の映像を見ながら、それぞれの時代の外野陣との比較を楽しむこともできそうです。

 
阪急の外野手として最も有名なのは福本豊選手で異論は無いと思います。福本選手は「世界の盗塁王」という圧倒的な知名度と、現在もメディアで活躍されていることもあり、現役当時の映像を見る機会が(比較的)多いのですが、一方で今回紹介する簑田浩二選手は、通算15年で1286安打、204本塁打、250盗塁という素晴らしい記録を残しながらも、後世に偉大さが十分に伝わっていないように思います。幸い、近年山田哲人選手や柳田悠岐選手がトリプルスリーを達成したことにより、再度、簑田選手にも脚光があたったことで留飲を下げたファンの方も多いかもしれません。そんな簑田選手の活躍と、彼の貴重な映像に関する情報を今回はお伝えします。

 
簑田選手自身がはじめて全国的に認知される機会となったのは、その走塁が注目された、レギュラー奪取前の1977年の日本シリーズ。9回表、1点で負けている状態で、一塁の代走として出場。見事に二盗成功させ、高井の左前安打の際に積極果敢な走塁で本塁を落とし入れます。
 

 
勝負を左右する状況でのスリリングな走塁でファンを魅了させてくれましたが、その好走塁でさえ、ベンチに戻ったあと上田監督から「スタートが遅い」と注意されたというエピソードも。当時の阪急ブレーブスがいかにレベルの高い野球を実践していたかが非常によく伝わってきます。

スポーツコミュニケーションズの記事から


簑田選手個人の盗塁数もまた、年間で61、33、39、26、27、35と今では十分にタイトルに手が(足が?)届く数字を残し続けたことも驚異の一言に尽きます。これだけの数字を挙げながら、なぜ盗塁王になれなかったのかについては、もちろん皆さまご存知の通りです。同じチームにこれだけのハイレベルな競争があるということもまた、阪急ブレーブスというチームのすごさを物語っています。

 
打撃では、1978年から1982年の途中までは1番福本選手の後を打つ器用な2番打者として活躍。この福本選手の後ろを打っていた頃は心労も多かったことが後にうかがえます。大熊選手など福本選手との一二番コンビが有名ですが、「世界の盗塁王」とコンビを組むことに、当時は大変な重圧があったのではないかと推測できます。


この二番打者での経験が生きたのか、その後3番打者として定着した1983年に打撃の本領を発揮。打率.312、32本塁打、35盗塁と当時4人目となる「トリプルスリー」を達成。この時の活躍を覚えている方は多いことと思います。
 


しかしながら、もう一つ簑田選手の誇るべき打撃記録は、このトリプルスリーからさかのぼり1981年に達成した「快記録」にあります。
 

81年の簑田選手の活躍はこちら

 
1981年に簑田選手が成し遂げたのは、ホームラン31本、39盗塁、それに加えて31犠打という「もうひとつの」トリプルスリー。これはプロ野球史上で達成者は簑田選手たった一人だけという快挙。いかに高いレベルでバランスの取れた選手だったかが分かります。その後、死球や自打球など不運な怪我が続いたことで調子を落としていったことが残念でなりません。

 
そして、最後は簑田選手の守備について。レギュラーとなった当初はレフトを守ることが多かったのですが、途中からライトが定位置となります。


守備に関しては『巧守巧走列伝』という文藝春秋社発売のビデオで自身から語っています。この映像では福本氏はもちろん、スペンサーやヘソ伝こと山田伝氏などにも触れられています。ここでは「エースが投げれば、カウントや相手打者によって思い切って守備位置を動かせる」「補殺では50mほど投げることができれば走者を刺せる」「常にボールよ飛んで来いという気持ちでいれば、実際に飛んで来たら対処できる」ということを話しています。どれも名手ならではの至言ですね。

 
プレーはもちろん、インタビューに答える簑田選手自身もたいへん画になります。残念ながらこの映像はDVD化されていません。もし、簑田氏のプレーを映像で見る機会があれば、改めてその華麗な動きとイケメンぶりに酔いしれてください。(KG)

(こちらから、その映像を見ることができます。27分頃から必見です)

攻守巧走列伝より